今週は、読者の方からの質問に回答します
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仕 事 の メ ー ル 作 法                                             < 読者からの質問(4)
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「ずつ」か「づつ」か

<読者からの質問>——————————————

「少しずつ」とか「一つずつ」という時には、
「ずつ」が正しくて「づつ」は誤り、と学校で習いました。

今回、会社のサイトに載せる文章で、「づつ」となっている
箇所があったので、担当者に連絡しようと思ったのですが、
その前にふとネットでも見てみようと思い立ちました。

そうしたところ、「ずつ」が正しいとするものがほとんどの中で、
『本則は「ずつ」で、「づつ」も許容される(づつも誤りではない)』
とする記事が目に留まりました。

その記事に書かれていたキーワードをもとに、
「昭和61年内閣告示 現代仮名遣い ずつ」で検索したところ、
こちらのページがヒットしました。

「現代仮名遣い」に関する内閣告示及び内閣訓令について:文部科学省

(一部引用)

5 次のような語は、「ぢ」「づ」を用いて書く。

(略)

(2) 二語の連合によって生じた「ぢ」「づ」

(略)

なお、次のような語については、現代語の意識では一般に二語に
分解しにくいもの等として、それぞれ「じ」「ず」を用いて書くことを
本則とし、「せかいぢゅう」「いなづま」のように「ぢ」「づ」を
用いて書くこともできるものとする。

(略)

例:(略) ひとりずつ

(引用ここまで)

こうしたことを参考にすると、今では「づつ」もハッキリと
誤りとはいえないのでしょうか……?

「ずつ」が正しい、と教えられた昭和の人間(笑)としては、
今さら「“づつ”も誤りではない」といわれても、モヤモヤして
スッキリしませんし、今後は「“ずつ”が正しいですよ」と
指摘するのも何だか気がひけてしまいます。
(読者 A.Aさん)

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「ずつ」と「づつ」の問題に限らず
「正しい」か、「誤り」か
という観点で言葉を見ていくと、

実に様々な解釈があり
正解を追っていけばいくほど
“言葉の迷宮”に深くはまり込んでしまいます。

そこで、少し観点を変えて
世間一般で「正しい」として使われている言葉を追求する
というよりも

自社での「表記の基準」を持つ
ことに観点を移してみることを
特に一般企業の方にはお勧めしています。

つまり、
「当社では〇○にのっとり、『ずつ』で表記を統一しています」
と対外的に伝えられるようにすることです。

上記の○○に相当するのが「自社の基準」です。

基準となるものは、広辞苑のような辞書でもよいのですが
私は 共同通信社の「記者ハンドブック」
お勧めすることが多いです(私自身も長年使っているので)。

これは新聞で使われている統一表記を示したもので
新書サイズで、2.5cmほどの厚さがありますが
広辞苑に比べ、はるかに薄くハンディなので使いやすいです。

「記者ハンドブック」では
「ずつ」で表記が統一されています。

ですから、仮に御社のサイトに「ずつ」の表記があり
それを見たお客様が
「『ずつ』ではなく『づつ』が正しいのではないか?」
といった問い合わせがあった場合でも

「当社では、共同通信社の『記者ハンドブック』を基準に
サイトやその他、対外的な文書の表記を統一しております」

と対応できれば、問題ありません。

実際に、「ずつ」か「づつ」かでクレームを言ってくるお客様は
いないかもしれませんが、

表記に関して、自社で設けた基準があれば
「黄門さまの印籠」のような形で対外的に示すことができ
説得材料にできると考えます。

ちなみに、「記者ハンドブック」に似た形態で
主に文芸書の編集者や作家が使っている
講談社の「日本語の正しい表記と用語の辞典」
という辞典がありますが
こちらも「ずつ」が統一表記として挙げてありました。

「づつ」も間違いではない、という解釈もありますが
上記の“基準”にのっとり
自社の文書の表記統一を設けることをお勧めしたいです。

新聞社や紙媒体の編集部では
「自社用の表記統一表」を作っているケースもあります。
Excelデータに、よく使う表記や専門用語をまとめて
自社の基準にしています。

長くなりましたが
上記が私の見解です。
参考にしていただけるとうれしいです。

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