今日は、間違いやすい敬語の使い方についてです。
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 メ ー ル の 敬 語 NEW           「申し付かる」について質問
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先週掲載した「申し付かる」について

読者の方から下記の質問をいただきました。

<読者からの質問>———————————————-

 Q)営業電話を断るときに

「上司にそのような件はお断りするよう申し付かっておりますので…」
 と使っております。
 社会人になってから決まり文句のように使っておりましたが、
 使用に問題はございますでしょうか?
                        (読者 H.Sさん)
—————————————————————-

「申し付かる」を辞書で調べると、該当する言葉が見つかりません。

もう一度、言葉の意味を整理すると

「申し付ける」は、上位者から下位者へ命令すること。
基本的に、主語は上位者(命ずる側)で
「部下に〇〇を申し付ける」のように使いますが、

下位者(命じられる側)を主語にする場合は
「上司からの申し付けにより〇〇いたします」
とするのが自然と考えます。

対して
「申し付かる」は、
「申し付ける」の「付ける」を「付かる」に変えることで
下位者(命じられる側)を主語にした言葉として使われているようです。

でも、辞書には「申し付かる」という言葉はなく、意味が定められていないので
当メールマガジンでは「適切でない言葉」と判断しました。

H.Sさんからの質問にあった
「上司にそのような件はお断りするよう申し付かっておりますので…」
を言い換えるとすれば
「上司からの申し付けで、そのような件はお断りすることにしておりますので…」
としてはいかがでしょう。

ほかの言い方としては
「当社では、そのような件はお断りすることにしております。申し訳ありませんが…」
としてもよいのではないでしょうか。

「付かる」を使う言葉としては
「仰せ付かる」があり、命令を受ける、という意味で
「社長から大役を仰せ付かる」
のように命令する者を敬っていう語 として使われています。

ほかに「付かる」を使う言葉には
「言付かる(ことづかる)」=伝言や物を届けるよう頼まれる
「言付かる」=言い付けられる。命令される。ことづけられる
などもあります。

「付かる」には、つけられる、の意があり
人から頼まれたり、命じられたりするときに用いられています。

そのため、「申し付ける」から「申し付かる」が派生したと思われます。

秘書検定では「申しつかっております」は正しい使用法とされている
との情報もありますので、社内の慣行として定着しているのであれば、
問題ないのかもしれません。

ただ、当メールマガジンでは、上記の理由で「申し付かる」の使用は
お勧めしていません。

 
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<読者からのお便り>

先週、掲載したVOL.1469「募金する」

に関連して、お便りをいただいたので紹介します。

———————————————————————-
「募金する」と同様に私が気になっているのは「来店する」です。

店側の人ではなく、店に訪れる自分の行為をいうときにこの言葉を使う人が
最近多くなっていると感じています。

「(自分が)×月×日に来店したとき、~」
「また来店したいと思います!」など。

類似表現では「来院する」もよく目にします。

「来店」「来院」は行為の起点と方向(いわばベクトル)を伴いますから、
終点側にいる人に使われると非常に違和感があるのですが、
「来〇」はかなり広まっている印象です。

私が慣れるしかないのか・・・
                 (読者 Mさん)
———————————————————————-

自分の行為に「来店する」「来院する」を使うのは、私も違和感を覚えます。

「来店」の意味は、人が店に来ること。
店側の人が客に対して「ご来店いただき、ありがとうございます」
「明日、ご来院ください」のように使います。

自分の行為として、店に行くことを伝えるのであれば
「(自分が)×月×日に店を訪ねた(訪れた)とき、~」
「また利用したい(伺いたい、行きたい)と思います!」
という書き方の方が適切ではないでしょうか。

Mさんのお便りにある「行為の起点と方向(いわばベクトル)」がとても大事
で、これを意識するか否かが、「来店」の使い方の分かれ目になっている気
がします。

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読 者 か ら の 質 問
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「弊社」と「当社」の使い分け

<読者からの質問>———————-

自分の会社のことを書く際に
「弊社」と「当社」という表現があります。

私も両方使用するのですが、
この2つの使い分けはどのようにするべきなのか、
何か決まりがあれば、お教えいただけませんでしょうか。

私自身は、お客様に対しては「弊社」、
自社が顧客である場合は「当社」
として使い分けをしているのですが、
確たる自信をもって使い分けているわけではありません。

もし、使い方に決まり事が存在するのであれば、
今更ながらでお恥ずかしいですが、
ご教示いただければ幸いです。

(読者 Y.Nさん)
—————————————-

言葉の意味を調べてみると

「弊社」は、自分の属する会社をへりくだっていうときに使い、
「当社」は、自分の所属するこの会社、という意味で用います。

したがって、
Y.Nさんの使い分け方で問題ありません。

顧客や目上の相手に対して
自社のことを言うときは「弊社」

上記のケースだけでなく、
相手に対して自社のことを言う場合
一般に使うのが「当社」です。

自社の呼び方については
過去の記事でも取り上げているので
参考にしてください。

▼職場の呼び方< 呼称の整理(3)>VOL.794

▼会社の呼び方< 読者からの質問(4)>VOL.1015

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読 者 か ら の 質 問
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「知れる」は「ら抜き」言葉?

<読者からの質問>———————-

最近とても気になっている言葉の使い方で
「知れる」というものがあります。

〇〇を知れてよかった
〇〇と知れて安心しました

〇〇を知ることができてよかった、
〇〇と知って安心しました、

でいいのではないかと思うのですが
某出版社の広告でも使われているので
自分の感覚がおかしいのかな? と思うほど。

実際のところ、「ら抜き」言葉の一種
なのではないでしょうか。

(読者 Y.Gさん)
—————————————-

「知れる」を調べると、辞書には下記の説明がありました。

1)人に自然と知られる。
(例)名の知れた会社 お里が知れる

2)(多く打ち消しの形で用いて) 話し手にそのことがわかる。
(例)気が知れない 得体の知れない人物

3)(「知れている」の形で)はじめから、その範囲がだいたいわかっている。たいしたことはない。
(例)たかが知れている

4)(「どんなに…か知れない」の形で)
非常に…するであろう、という予測や、非常に…したという気持ちを表す。
(例)どんなに喜ぶか知れない

質問にある
「〇〇を知れてよかった」
「〇〇と知れて安心しました」
は上記の4つの意味には当てはまらないようです。

「…を知れて」は「…を知ることができて」
「…と知れて」は「…と知って」とするのが適切だと思います。

「知れる」で検索すると、ニュース記事には
「軽井沢の小さな雑学知れるミニ講演」
「…について深く、速く、幅広く知れる」
のように見出しとして簡潔にするために「知れる」としているケース

「花言葉が年賀状きっかけで、知れるのはいいよね」とか
「…を先に知れるんだよね」のように
話し言葉で使われているケースがあります。

いずれも、本来は「知ることができる」と書いたり言ったりするのが適切ですが、
短く言いやすくするために「知れる」が使われているようです。

質問にあるように、「ら抜き」言葉の一種でしょう。
でも、書き言葉では「ら」を抜かず「知ることができる」を使いたいですね。

<追記>2024.12.

この質問に回答したのが2018年。
6年後の2024年に「知れる」がどの程度、
新聞やネットニュースの見出しに使われているか、
検索して調べてみました。

「著者の新たな一面が知れる名著」(某出版社)
「まちの面白さを知れるオンラインイベントを開催」(某自治体)
「○○の50年の歴史が知れる○○展」(某Webメディア)
などがありました。

上記に挙げた見出しは
「新たな一面を知ることができる名著」
「まちの面白さを知ることができる」
「歴史を知ることができる」

とするのが適切ですが
「知ることができる」と8文字使うより「知れる」と3文字にすれば
5文字も減らすことができるので、見出しに「知れる」が使われ続けているのでしょう。

6年の間にむしろ
「ら抜き」言葉として意識されず
一般語として定着してきた感さえあります。

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     読 者 か ら の 質 問
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「すごく」と「すごい」

<読者からの質問>———————

「すごく」「すごい」について質問があり
メールさせていただきました。

私にとってはどちらの言葉も
どちらかというと
話し言葉のように思えるのですが、
書き言葉としても使用できるものでしょうか?

メールや文章などに書くとすれば、
「とても」「大変」のような言葉が
しっくりすると思うのですが・・

(読者 M.Yさん)
—————————————

話し言葉か、書き言葉かといえば、
「すごく」は話し言葉で使われることが多いかもしれません。

私は、メールで相手に気持ちを伝えたいときには
「昨日はすごく楽しかったです」とか
「すごく有意義な内容の講習でした」
のように「すごく」を意識して使っています。

「とても楽しかった」
「大変有意義な」とすれば
卒のないきちんとしたメール文になりますが、
懇意な相手に対して、もっと気持ちを伝えたいと思うときには
「すごく」を使います。

相手との親密度や状況によって
使い分けるとよいのではないでしょうか。

「すごく」「すごい」については
過去の記事でも取り上げているので
参考にしてください。

▼<気になる言葉(2)>
「すごい」と「すごく」VOL.269

▼< 改まった言い方(5)>
「すごい」の言い換えVOL.2999

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今週は、敬語の使い方についての雑感です。
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仕 事 の メ ー ル 作 法              < 敬語の問題(3)
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          「お手伝いをさせていただきたいと存じております」

今週は、敬語の使い方に感じる疑問や違和感について取り上げています。

「会社をあげて誠心誠意できる限りのお手伝いをさせていただきたいと存じて
おりますので、ご遠慮なくご相談ください」

上記は、企業→顧客に向けた一文です。
「お手伝いをさせていただきたいと存じております」から敬語を取り除くと
「手伝いたいと思っているので」。相手に対して、「手伝いが必要なら、手伝
いますので」とう気持ちからの一文と思われます。

でも、このようなときは「手伝いたいと思っている」とか「手伝おうか?」と
言われるより、「手伝うよ」と言われる方が私はうれしいです。手伝いが必要
なとき、そう言われれば「ありがとう。助かる」と答えられるし、手伝いが必
要でないときは「ありがとう。今は必要ないから大丈夫」と返せます。

前文に戻って、「会社をあげて誠心誠意できる限りの」手伝いをしたいのであ
れば、「お手伝いをさせていただきたいと存じております」と敬語を重ねるよ
り「お手伝いいたします」と言い切る方が、顧客の心をつかめるのに……と思っ
てしまいました。

上記の文を書き換えるとしたら…
「会社をあげて誠心誠意、できる限りのお手伝いをいたします。どうぞ、遠慮
なくご相談ください」
とする方が意気込みが伝わってくると思いませんか?。

敬語を重ねて丁寧な言い回しにすることが、相手に対して「言葉を尽くす」こ
とではないはず。相手に対してどう行動するか、どう対応するか、伝えるべき
は、その人、その企業の「姿勢」です。

例に挙げた丁寧すぎる言い回しの文を見るにつけ、言葉で相手を敬うことの方
に重点が置かれ、実際の行動・対応に結びついてないような気がするのです。

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【しごび】 の お 知 ら せ
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