今週は、言葉の思い違いや勘違いについてです。
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仕 事 の メ ー ル 作 法 < 嗚呼、勘違い(2)>
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「胸が熱くなる」
社内行事で、ある記念館を見学した3人の事例を挙げます。年齢も役職も異な
る3人の感想です。
「彼らが遺した言葉に胸が熱くなりました」
「子どもを持つ親として、胸が熱くなりました」
「手紙には家族に対する感謝と前向きな言葉が多く、胸が熱くなるものがあり
ました」
三者三様の感想文に、共通して使われている「胸が熱くなる」という言葉。じ
いんと感動がこみ上げてくることを指します。
戦地へと向かう若者たちが家族に宛てた遺書の展示を見学し、心を動かされた
様子を述べる際に、3人がそれぞれに使っているのですが、この場合は感動で
胸が高ぶる状態というより、悲壮な状況にありながら家族を思う遺書を目にし
て「胸が痛む」「胸に迫るものがあった」「言葉もない」といった表現の方が
しっくりくるように感じました。
「胸が熱くなる」を調べているうちに、「胸熱(むねあつ」という略語が【20
10年ネット流行語大賞】のトップテンにノミネートした若者言葉の一つとあり
ました。感動の程度を表す言葉として、別のニュアンスで使われていたことを
今さらながら知り、上記の感想文に「胸が熱くなる」が共通して使われていた
理由が理解できました。
人が心を動かされている状態を、とやかく言うのも野暮な話ではありますが、
感情を表す言葉にはプラスの方向・思考を表すものだけでなく、悲しみややる
せなさといったマイナスな感情もあります。
心動かされた状態を「胸が熱く」という言葉だけで片付けてしまうと、上記の
事例に挙げたような、別の人が書いているのに似たような感想になってしまう
ことを残念に思いました。
言葉の勘違いというテーマから外れるかもしれないですが、気になったので
書いておきます。